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  • 2010.06.16 Wednesday
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「携帯の電波でペースメーカー誤動作」は本当なのか?(産経新聞)

 「私の娘は8年前から心臓ペースメーカーをつけています。当初、携帯電話の電波の影響を考えて電源をオフにしていましたが、主治医の先生から気にしなくて良いと言われました。携帯電話の電波が影響してペースメーカーに深刻な誤作動を起こした例はあるのでしょうか」=福岡県大川市の団体職員、江崎賢司さん(48)

 ■指針では22センチ

 心臓ペースメーカーは、脈が乱れた際に、電気刺激を送って心臓が正常なリズムで脈打つのを助けるための医療器具だ。

 肩に植え込むタイプでは、本体に電池と電気回路が内蔵され、リードを伝って心臓に電気刺激を送る。

 平成7年ごろから急速に携帯電話が普及したことに伴い、ペースメーカーをはじめとした医療機器への電波の影響が危惧(きぐ)されるようになった。

 その根拠としてあげられるのが、総務省が出している「ペースメーカーと携帯電話の距離は22センチ離すべきだ」という指針だ。これは、平成9年に業界団体や関係省庁が作った指針を総務省が引き継いだものだ。

 「22センチ」という数字が導き出されたのは、第2世代の携帯電話を対象とした調査で、一部機種との距離が15センチでペースメーカーに誤作動の影響が出たことを基に、幅を持たせて設定された。

 ただ、「調査は最悪の条件で行っているため、22センチを切ったら必ず影響が出るというわけではありません」と同省電波環境課の担当者は話す。携帯電話は出力を最大にする一方、ペースメーカーは影響を受けやすい状態で調査を行っているからだ。

 しかも、現在使われている携帯電話は98%が第3世代。第3世代は第2世代に比べて電波の出力が弱くて済むという。現在も、一部で第2世代の携帯電話のサービスが続いていることから、「22センチ」の指針は継続している。

 実際に誤作動を起こした例はあったのか。

 医薬品や医療機器の安全情報を収集している独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」(東京)によると、携帯電話が医療機器に影響を及ぼした例はないという。危険性はないとは言い切れないものの、極めて低いといえそうだ。

 ■不安ぬぐえず

 患者団体はどう受け止めているのか。

 日本心臓ペースメーカー友の会の佐久間陽子理事(59)は「患者さんでも、携帯電話を使用している人はいます」と話す。

 電波を吸収する装置を使うなどペースメーカー自体も改良されて影響を受けにくくなっており、最近は入会してくる新会員に対し、携帯電話の影響は特に心配する必要はないことを説明しているという。

 ただ、ペースメーカーの寿命は長い人で15年ほどは持つといい、「現状ではまだ、携帯電話の影響を受ける可能性のあるペースメーカーをつけている人がいます。そういった人が皆無にならない限り、公共の場では気をつけてほしい」とも訴える。

 横浜市内の大学病院に勤める循環器内科の男性医師(56)も「ペースメーカーを装着している患者にとって、携帯電話の電波は日常生活を送る上でほとんど問題ない。気になるなら植え込んでいる肩とは別の手で携帯電話を持って話せばいいし、他人が使う分には問題ない」と話す。

 「必要以上に不安を与えるのは良くない」という考えはペースメーカーの業界団体である日本不整脈デバイス工業会も一緒だ。昨年1月、NHKが放映したドラマの中で、静電気ショックを与えてペースメーカーを故障させるというトリックが使われた際には、同工業会がNHKに対して「患者や一般視聴者に誤解を与える」と申し入れた。

 ペースメーカーの開発にも携わる日本不整脈学会の豊島健さんは「アメリカやカナダなどのガイドラインは15センチ。私の知る限り、電車やバスなどの車内で使用制限を呼びかけている国は日本だけではないか」と話すが、「実験では誤作動を起こすこともある。決して指針は絵空事ではない」。

 鉄道各社ではマナーの側面からも、車内での携帯電話の利用を控えるように呼びかけているが、今でもペースメーカーの装着者から「優先席付近での利用マナーを徹底してほしい」という声が寄せられるという。

 日本不整脈デバイス工業会では、「安心と安全は違う。安全だといくら言っても、ペースメーカーの装着者の方が安心して使えるようにならないといけない。誤作動を起こす可能性があるうちは、指針は簡単には変えられないのではないでしょうか」と話している。(油原聡子)

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